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症状がなくても...
2015年08月28日歯科医師
こんにちは。
今日は、 “症状がないのに虫歯がある” 症例を紹介します。
患者様の中でも症状がないのに虫歯があると言われて困惑した経験がある人もいてらっしゃるのではないでしょうか?
僕は去年、虫垂炎になりまして...夜中に腹痛で目が覚めて、痛みで歩くことも困難な状況になりました。救急車を呼んで、病院に行きました。先生が言うには、僕みたいに激痛を訴える人が多いが、ちょっとお腹が痛いから...と病院に行って虫垂炎と診断される方も少なくないそうです。歯でも同じことが言えると思います。痛みの感じ方や痛みが発現する閾値が人によって違うからです。
今日はそんなお話をしていきます。
しみる・痛いなどの症状がないのに、虫歯があった症例が多くあります。特に歯間部(歯と歯の間)から虫歯になるケースでは、痛みを感じにくいと言われています。今回のケースも患者様自身ではなにも症状がないまま、神経にまで及ぶ虫歯が発見されました。
見た目では、コンポジットレジンに着色は認めますが、特に虫歯はないように見えます。症状も特になく、患者様は虫歯があるなんて信じられない様子でした。
レントゲン診査をしてみると第一大臼歯(後ろから2番目)の歯の間に大きな虫歯を認めます。奥の第二大臼歯にも虫歯があります。また、第二小臼歯(第一大臼歯の手前の歯)には前回治療の大きな虫歯が原因で根の先に黒い影を認めます。これは神経が虫歯によって壊死し、感染を引き起こし、膿を溜めている状態です。
信じられないかもしれませんが、これほどまで大きな虫歯になっていてもほとんど自覚症状がない方もいます。痛みの感じ方や神経の反応は人によって差があります。また歯の大きさ、エナメル質や象牙質の厚み、歯髄までの距離、歯髄の形なども人によって異なりますので、痛みを感じる方もいれば、ここまで来ても感じない方ももちろんいらっしゃいます。
実際に虫歯を取っていく様子です。咬合面のエナメル質を除去してみると、大量の軟化象牙質(虫歯)を認めます。写真は齲蝕検知液という虫歯になっている歯質をピンク色に染める薬液を使っています。
虫歯を綺麗に取り除く頃には、神経の管(歯髄)に到達していました。歯の中の血液は、神経とともに平行走行している毛細血管からの出血です。歯髄への感染が疑われますので抜髄(神経を取る処置)を施行しました。
次の症例は、以前にコンポジットレジン修復をしていて、中で虫歯になった症例です。コンポジットレジンは吸水性があり、経年変化により辺縁漏洩(歯とレジンの間に隙間ができる)が起こり、着色や進行すると虫歯にもなる可能性があります。この場合も症状は出にくく、症状が出る場合のほとんどは虫歯によってレジンが外れたり、歯が欠けてからの方が多いように思います。
真ん中の第一大臼歯のコンポジットレジンの着色は著名ですが、虫歯になっているかどうかは怪しいといったところです。症状は特になく、ずいぶん前に詰めたとのことでした。後ろの第二大臼歯には特に虫歯がないように見えます。
古くなったコンポジットレジンを除去したところ、大きな虫歯が発見されました。(先にレントゲンで診査しています)第二大臼歯の歯間部にも虫歯がありました。
虫歯を除去したところ、神経には及んでいなかったため、歯髄保護処置を施行し、インレー(保険の銀歯で作る詰め物)で治療することにしました。
銀歯のインレーを装着し、定期検診の重要性を説明いたしました。保険で使用されている金銀パラジウム合金も経年的に変形を起こすため、中で虫歯になる可能性が高くなります。良くブラッシングをし、定期的に検診を受けることで、早期発見・早期治療という低侵襲治療が可能になります。
最後の症例は、金歯を装着していて、中で虫歯になった症例です。同じく症状は何一つなく、高価な金歯を外すのに抵抗感がある様子でした。また、この患者様は2ヶ月に1度のペースでクリーニングを行っており、人一倍、歯には気を使っている患者様です。
第一第二大臼歯に金歯のインレーが装着してあります。見た目では第二大臼歯の金歯の辺縁歯牙に黒い影を認めます。
インレーを除去してみると、第一大臼歯と第二大臼歯の間の部分に虫歯を認めました。虫歯と古くなったセメントを綺麗に除去していきます。この方も歯髄には到達していませんでしたので、歯髄保護処置をして神経がある状態で補綴治療をしていきます。
第一大臼歯は虫歯の範囲が大きく、残存歯牙の破折を防ぐため、クラウン(被せ物)の形で補綴することにしました。患者様は、また虫歯になるのが怖い...とのことで、変形や劣化の起こりにくいオールセラミックでの治療を選択いたしました。第一大臼歯にはジルコニアオールセラミッククラウン、第二大臼歯にはE-maxプレスセラミックインレーを選択します。セラミックは、見た目が綺麗だけでなく、身体に優しく、虫歯になりにくい補綴物の作製が可能です。
綺麗に装着が完了し、引き続き検診に来ていただいています。
以上のように、 “症状がなくても虫歯ができる” 症例をご覧いただきました。症状がないからといって、定期検診を怠らず、6ヶ月に1度くらいは歯医者に行って診てもらってください。またずいぶん長い間、歯医者に行ってないな〜って方、早めの検診や受診をお勧めいたします。
症状がある(しみる・噛むと痛い・何もしてなくても痛い)方は、今すぐご予約のお電話お待ちしております!!(笑)
歯科医師 本多弘明