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なぜ歯の治療は1度で終わらないのか?分けたほうが儲かるから?
2019年04月15日歯科医師
虫歯などで歯医者に行くと、だいたい1度の治療では終わらないことが多く、「えー、また来ないといけないのか・・」とがっかりした経験をお持ちの方は多いのではないでしょうか。「複数回に分けた方が儲かるから、あえて治さないんじゃないのか?」という疑問を抱く方も多いようです。
目次
4.まとめ(結局のところ治療を複数回に分けた方が儲かるのかどうか)
医療者である歯科医師が再診を促すには訳がある
「複数回に分けた方が儲かるから、あえて治さないんじゃないのか?」これは大きな誤解です。歯医者に来られる患者様の多くは「歯が痛みだした」「虫歯があるあたりが腫れてきた」など、すでに自覚するほど症状が進行している場合が多いからなのです。虫歯は痛みが出るほどに進行してしまうと、ちょっと削ってコンポジットレジンという詰め物をしておしまい、というほど簡単にはいきません。
例えば歯を大きく削ることになれば、コンポジットレジンではなく金属の詰め物や被せ物を使うことになります。これらはその場で作れるものではなく、製作に日数がかかります。また腫れや痛みがおさまらないとできない処置もあるため、抗生剤を処方したりして腫れや痛みがおさまるであろう日を予測し、次の受診日を決めているというわけです。
歯科医院の再診例
ここで具体的に、治療を分けて行う必要がある例をいくつか紹介しましょう。
奥歯の虫歯:通院2回程度
強く噛みしめることが多い奥歯に入れる詰め物は強度が必要なため、保険診療では金属を使うことが多く、これは歯科医には作れないため、歯科技工士に依頼して作ってもらう必要があります。そのため1回目は虫歯を削って型取りを行い、後日できあがったものを歯に入れることになります。この時に炎症がおさまっていないなど、入れられない場合は処置を延期することもあります。
重度のむし歯:通院2~5回程度
虫歯が進行して、虫歯菌が神経に達して炎症が起こっている状態や、さらに進行して神経が死んでしまった状態になると、神経を取り除く処置を行う必要があります。神経を取り除いた後は、歯の内部を無菌状態にするために消毒しながら、根管と呼ばれる血管それに神経が通っていた管を削って形を整えていきます。形が整ったら、無菌状態を維持するために根管充填剤を詰めて処置は終了です。神経を取り除く処置を丁寧に行わないと、内部に菌が残ってしまい、再感染して再び治療が必要になったり、最悪の場合は抜歯することになりかねません。治療の回数は歯の場所や、神経の数によって大きく変わります。
重度の歯周病:最低2~3ヶ月
歯周病が進行すると、歯周ポケットの奥にまで歯石がついてしまい、通常の歯石除去では取りきれません。細菌の温床である歯石が内部に残ったままでは、歯周病がさらに進行しやすいだけでなく、虫歯の原因にもなります。そのため、歯茎を切開して歯石を取り除く外科的手術が必要になる場合もあります。歯周病はゆっくり時間をかけて進行する分、治療にも時間がかかるのです。
事前に治療計画の説明を受けることが大切です
最近は「短期集中治療」や「早期治癒」を謳う歯科もありますが、事前に歯科医から治療計画を説明して、患者様の同意を得てから治療を行う必要があります。治療内容や治療にどれくらい時間がかかるのか?などの疑問点は、歯科医から事前に説明してもらい、メリットとデメリットをきちんと把握したいものです。
まとめ
(結局のところ治療を複数回に分けた方が儲かるのかどうか)
実は1日50人診ても5人でも、治療にかかる手間の総量が変わらなければ診療報酬に大した差はありません。つまり極端な話ですが、受付や事務的なことを含めて考えれば、経費が少なくて済む分、一人に時間をかけたほうが儲かるといえます。 国が定める保険診療の制約もありますが、前述のように1回の治療で治せるケースが少ないというのが大きな理由です。なるべく1回の治療で済ませるには、虫歯や歯周病が進行してしまう前に治療することが一番ですので、歯医者で定期的なチェックとメンテナンスを行うようにしましょう。